皆さん、こんにちは。
『お仕事映画館』のお時間です。
今日ご紹介するのは最近まで劇場で公開されていた話題作!
『シビル・ウォー』です!
トランプさんが再びアメリカの大統領になったことでにわかに話題になったIFものの作品ですが、きわどい映画がきわどいタイミングでやってきたなぁ!と感じて見に行ってきました!
【あらすじ】
大統領の暴挙が呼んだ混乱はアメリカを二分するまでに発展していた。
現政権に反旗を翻したテキサスとカリフォルニアの同盟からなる西部勢力は勢いを増してどんどんワシントンに向かう。
そんな内戦にカタが付いてしまう前に、現大統領にインタビューをしようと試みるジャーナリストたち。
彼らは分断されたアメリカを旅しながら何を目撃するのか?
【不揃いの一団が行く地獄めぐり】
引退目前の爺さんジャーナリストと中年のおじさんジャーナリスト。
そしておばさん報道カメラマン。
そこに飛び入り参加の報道カメラマン志望の女の子。
4人のロードムービー。
題材が過激なので道中に出くわすモノもかなり過激。
正直言って観賞には注意が必要です。
日常が崩壊した先に剝き出しになる差別や価値観の違い。
大きく浮き彫りにされたそれらは常に映画全体にまとわりついて気が緩む時がありません。
さっきまで生きていた人が次の瞬間には死体になっている。
そんな悲劇が極めて身近になった状況。
そんな悲劇を後の時代に残すために写真に収める主人公たち。
時に一方的な暴力を傍観しながら、時に命の危険にさらされながら、それでも彼らは前に進んでいきます。
常に体調悪そうな人相のキルステン・ダンストと、幼さの残るケイリー・スピーニーが徐々に理解し合っていく描写や、各地の避難所での場面が救いですが、国中が殺しあう中で助け合う人たちや理解を深める人たちがいる。
このなんとも言えない不条理が胸を締め付けます。
映像も音響も選曲も冴えていますが、それでも観る人を選ぶ修行ムービーだとも言えます。
アメリカン・ニューシネマよりも救いはあるんですが、最近のビッグバジェット映画の中では深刻な場面描写に対して妥協していない稀有な映画。そして観客のリテラシーの高さを信頼している説明の少なさ。
さすがA24です。
一人の女の子の成長物語としての側面はあるんですが、そこも現実的な表現にとどまっている。
良いも悪いも、観賞した人によって映画の評価が分かれる映画だと言えますね。
【お仕事映画としての注目ポイント】
さて、こちらの『シビル・ウォー』ですが、お仕事映画としてはどんな部分に注目するとよいのでしょうか?
「死ぬ気でやり切れば凄い結果が得られる」
「年上のいう事は聞け」
「赤いサングラスの男には近づくな」
こういった観点でしょうか?
いいえ、違います。
答えは「中年になるまで病的な業界にい続けるのはヤメたほうがイイ」です。
劇中でベテランカメラマンのキルスティン・ダンストは悲惨な状況を目の当たりにしてどんどん疲弊していきます。
映画の序盤から既に彼女は自分が過去に経験してきた悲惨な場面に心を蝕まれていました(たぶんそれだけじゃない)。
そんな時に母国が内戦状態に陥ります。
心にヒビが入ってしまっていた彼女は母国での悲劇を繰り返し目撃していくうちに身動きが取れなくなるまでに塞ぎ込んでしまいます。
心が壊れてしまったのです。
私はこの様を見て思いました。
「ブラック企業じゃなくてもブラックな業界だと、本人が好きでやっててもいつか心がぶっ壊れちまう!」と。
確かにここまでブラックな状況は稀ですが、都会の繁華街でゲロにまみれて倒れているホストを見かけると「無茶はイケないぜ」と思うのです。
所属している店がホワイトな体質でもブラックな攻め方じゃないと稼げないのがお水の世界。
騙し騙され飲み飲まれ。
そんな事をしていればいずれ心にガタが出始めます(肝臓も)。
生涯現役でいたいホストがどれだけいるのかは知りませんが、普通に考えて50~60代のホストってまずいないじゃないですか。
需要が無いと言えばそれまでですが、道楽でやっているヤツがいてもおかしくはないハズ。
でもまず見かけない。
それは心がぶっ壊れてしまうからなんですね。
その他にもブラックな業界は沢山あります。
配達に行ったら長時間説教される。
レシートが無いのに返品を強要される。
メニューが数えるほどしかないのにやたらと独自ルールが厳しい。
貸し出した車が返却時に臭い。
患者が暴力をふるってくる。
ジジイがケツを触ってくる。
そんな人の心を壊してしまうブラックな業界ってのはあります。
ちょっとだけなら人生において重要な経験や考えを得られるかもしれませんが深入りするのは避けた方がイイ時もあるんです。
自分から戦地に飛び込んでいって、そのまま中年になるまでハードワークしているとキルスティン・ダンストみたいな人相になっちゃうぞ!
「そんな事を教えてくれるのだなぁ」と思いながら観ると、とても勉強になる最高の教材です。
やっぱり目の前で人が死ぬような職業は特殊な人じゃないと無理です。
知らんけど。
【まとめ】
そんなワケで今回は映画『シビル・ウォー』をご紹介しました。
音響や選曲もイカした映画なので是非観てもらいたいのですが、人が殺される場面が苦手な人はヤメた方がイイかも。死にまくるので。
でも学びも多く為になる映画なので個人的にはオススメです。
今のアメリカの状況と結び付けて批評されることの多い作品ですが、個人的には身近なIFを描いたSF映画だと思って観賞してもらうのがイイんじゃないかと思います。
スパイダーマンの時からずっと人相の悪いキルスティン・ダンストと、エイリアン・ロムルスでも演技が光っていた可愛いケイリー・スピーニーを見比べるだけでも価値があります。
キルスティン・ダンストって昔はヒロイン枠だったんだよねぇ…と40代になった私は複雑な気持ちになるのでした。